第2分科会 「コミュニケーション」
                      記録者 藤野小学校 教諭 安東 一郎
 
質 国語科の中で,コミュニケーション能力をつける指導をするにあたって,自分に自 信をつける手立ての工夫にはどんなことをしているか。
 
答 すぐに100点をとれる授業(特に漢字のテスト)をする。
   保護者に児童の実態を知らせ,それの改善に向けての協力体制をつくる。
   大舞台(発表会など最終的に児童が自己表現する場)を設定し,それに向けての目 標をもたせ,学習ののりを作る。
   新聞社に連絡し,作文などの投稿を勧める。
 
意 今の社会に見られる様々な事件にかかわっている子どもたちは,人とのかかわりが 下手な子どもたちのように感じる。人とかかわる力の育成の大切さを感じる。それ故に, 授業の中で少しずつも人とかかわる力をつけていくのは大切なことである。目の前の子 どもたちにとって,人とかかわる力を育てていく上で基本となることは何なのかしっか り押さえて取り組まなければならない。 
  子どものコミュニケーション能力を育てるには『聞く・話す力』と『人とかかわる力』 の両輪で進まなければならないのではないか。『人とかかわる力』の育成だけに力を入 れていると苦手の児童は前に進まなくなる。『聞く・話す力』が育つことによって『人 とかかわる力』も育ってくる児童もいる。その点を見落とさないようにしなければなら ない。
意 人とかかかわりながらよりよい人間関係をつくるコミュニケーション能力を育てる 場づくり(めあてのもたせかた)がすばらしい。人と人のつながりをつくっていこうと する思いが伝わってくる。
意 国語ができる子どもは英語もできると言い切ることには賛成できない。
 
質 話すことのできない児童(緘黙)のコミュニケーション能力を高めるための工夫は どんなことをしているか。
 
答 保護者に連絡を取って,緘黙の児童に卒業までにはみんなの前でしゃべることがで きるようになることを目標に掲げ,他の児童の協力を得ながら進めている。場合によっ ては厳しく指導することもある。実際には緘黙の状態が改善されてきている。専門的立 場の人が言われるには保護者の理解と本人の理解を得た上でのこの取り組みが,タイミ ング的にちょうどよかったことにより,改善が見られたとのことである。
 
質 漢字定着の工夫にはどんなことをしているか。
 
答 あらかじめ覚える漢字を知らせておく。そして,これを保護者にも知らせテストを することを伝えると,協力を得ることができ成果を上げることができた。教科書の音読 に関しても保護者に協力をしてもらい家庭でしっかり学習する体制をつくった。
成石先生による指導助言
○今回の発表について
 中学校のある部活動の指導者の言葉「この子が試合で何位をとるという目標ではなく,この子がこの活動を通してどう伸びていくかを大切にしている。」が,奥山先生の発表に見えてくる。
 指導するその場は点であり,それをつないでいく線をどのようにつくっていくかが授業の基本である。今回の発表の『年間5時間で話したくてしかたない子にする方法』に表れている。
 線でつないでいくためには,そのことが『好きになること』と『必要感』が大切である。『好きになること』には興味関心を持たせることが大切で,学習したことがいろいろな活動に広がって発展していく。そして,今まで気づかなかったことにことなどに目が向くようになる。また『必要感』をもつことにより,いろいろな場にあった対応(表現)が可能になり,人とかかわる力が育つ。今回の発表に『話したくてしょうがない。』という意欲興味を持った児童を育てようとしているのがよく分かる。
 子どもたちの本当の姿(実態)に対しての実践を進めていかなければならない。今回の発表ならば,学力が遅れ気味の子どもたちがいかに意欲を持って学習に取り組み,コミュニケーション能力が育っていくかが目標であるが,指導者がどれだけ自分を開放し,子どもたちと膝をつき合わすことができるかによって,本当に子どもたちが求めているもの,と指導者がねらっているものとが一致するのである。これは知識・理解ではなく,子どもたちから感じるセンスが重要となる。
 
○英語力を高めるにあたって
 外国に出て感じることである。
 まず,日本と違うことを認め理解することの大切さである。(優劣をつけるのではない。)これは国際感覚をつける上でとても大切なことである。
 次に,日本を語れる日本人であることである。外国の人に日本について何か尋ねられたときに,答えられないやりきれなさを感じる。お互いの国を語ることで,両者の間を狭くするのにつながっていくと感じる。
 
○英語指導の中で
 英語に関する授業に対して,「中途半端な指導が見られる。(発音がおかしい。)」などと批判する声が聞こえることがある。しかし,これはおかしいことであって,中途半端としてとらえるのは周囲であって,自分自身の信念を持って授業をすることが大切。最初に述べた中学校の部活動の先生の言葉に通じるものがある。
 また,バイリンガルを,書くことはできないけれども,話すことができるととらえればいい。そうすることによって子どもたちにコミュニケーション能力が育つものと考える。ここで,自分の心を開放して,相手を受け入れることのできるセンスの持ち主は,言葉の身につき方も違うことを付け加えておく。